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投稿日:2023年06月16日
PMO

RISEが目指すProject Management “Orchestration”とは?

これまで本プラクティスでは、以下の3回の記事を通じて、プロジェクトマネジメントの難しさ、今後の行方を明確にしてきた。本記事では、これまでの3回の記事での課題認識をもとに、これから必要となるPMOサービスとして、当社が目指す”Orchestration”型のPMOについて、あらためて解説する。  

PMI(米プロジェクトマネジメント協会)がレポートで「経済活動の約20%がプロジェクトベースである」と発表した一方、市場におけるマネジメントのスキルや知見は不足しているという課題を指摘したうえで、対応策としてクイックにマネジメントレベルを診断できる「1Day診断」を提案 

VUCA時代のプロジェクトマネジメントの難しさとして「将来の予測可能性の低下によるリスクマネジメントの高度化」「リスク顕在化をいち早く察知した対応」の2つを挙げ、これまでの「中央集権的PMO」から「自律分散型PMO」に変化する必要性を提言 

 

筆者は、これまで、組織・業務・IT改革の構想策定・実行支援などに係るプロジェクトマネジメントを担当し、さまざまな業種・業界/ソリューションでのプロジェクトマネジメントの支援および、課題解決に取り組んできた。本稿では、現場での課題やVUCA時代などの環境・時代の変化を踏まえ、クライアントと共に目指す未来のプロジェクトマネジメントの姿とはどのようなものかを述べる。 

目次

RISEが目指す“Orchestration”型PMO

図1:“Orchestration”型PMOの全体像

 

当社のPMOサービスは、PMOの“O”を、Orchestrationの“O”として位置付けている。“Orchestration”型PMOでは、、プロジェクトマネジメントにおける必要な考え方として、「マネジメント領域のOrchestration」「戦略のOrchestration」「システムとデータのOrchestration」「人と組織のOrchestration」の4つを示している(図1)。 
基本的には、管理作業のみを実施するPMOの時代は終わりつつあることから、一つのマネジメントスコープやプロジェクト関係者・組織のみへの支援に留まらず、スコープ内外/プロジェクト関係者・組織内外を意識したScopelessかつプロアクティブなマネジメント支援が必要と考えている。これらを通じて、クライアントの真の成果である「プロジェクトの成功(KPIの達成)」「最短ルートでのゴール(生産性の向上)」「メンバーの満足度の向上(一人一人の成長貢献)」を目指すことが“Orchestration”型PMOである。 

 

1.マネジメント領域のOrchestration

プロジェクト運営に必要なマネジメント要素・領域には、スコープ管理、スケジュール進捗管理、課題管理、品質管理、およびレポーティング(報告管理)などが存在し、これらは別々に管理される場合が多い。 
別々に管理を行えば、当然その分の作業量やコストは増加する。PMBOK(Project Management Body Of Knowledge)では、これらを統合する概念として「統合マネジメント」領域が存在しているものの、実際のプロジェクトにおいてこれらを作業レベルで統合することは難しい。 
複数のマネジメント領域をシームレスに連動させることで、プロジェクト運営を最適化・省力化・自動化していくものが、マネジメント領域のOrchestrationだ。 
具体的には、以下の点を踏まえて実現を目指していく。 

 

  • プロジェクトにおける進捗と課題、品質などの関係性/それらに伴うリスクなどの重要性を踏まえたマネジメントルール策定
  • PMO/マネジメントメンバーの要員配置・作業分担を個々管理とせず連携を強化
  • 統合型プロジェクトマネジメントツール導入などによる統合管理の実施 

 

2.戦略のOrchestration

プロジェクトの目的・戦略方針などは、プロジェクトの組成によって様々だが、クライアントの企業戦略や事業部戦略に合致していない(ズレている)ケースも多々見られる。また、社内の複数部門横断のプロジェクトや複数社協力によるプロジェクトとなれば、よりその傾向は強くなる。 
戦略のOrchestrationは、このようなプロジェクトを取り巻く各組織母体やステークホルダーと、プロジェクト自体の戦略GAPに関する整理・調整・解消を重要視し、最終的なプロジェクトの成功、ステークホルダーの満足度に大きく寄与するものだ。 
具体的には、以下の点を踏まえて実現を目指していく。 

  • プロジェクト開始時における取り組み課題の深堀り
  • 組織戦略の確認とステークホルダー調整、プロジェクトゴール・目的・方針と戦略の策定
  • プロジェクト開始後の環境(マネジメントとしての優先順位も含め)の変化にタイムリーに適応していくための各ステークホルダーとのコミュニケーションや戦略モニタリング 

 

3.システムとデータのOrchestration

プロジェクトにおいて扱う情報は多い。最終成果物に向けた情報(設計書や仕様書など)、マネジメントに関する情報(進捗情報、課題情報、テスト関連情報など)、ストック情報とフロー情報(各種周知情報など)もあり、プロジェクトの規模次第では膨大なものとなる。多くの場合、これらの情報(データ)はシステムやツールによって管理されている。 
近年ビッグデータやAIの活用が盛んになり、ビジネスの現場においても情報統合と利活用が進められているが、プロジェクトマネジメントにおいても同様だ。 
ただし、マネジメント領域でのシステム・データ統合とその利活用は遅れている。 
このよ状況を踏まえ、システムとデータのOrchestrationでは、プロジェクトマネジメントに関するシステムやデータを統合したうえで利活用を推進し迅速な分析や意思決定を実現させることを目指している。 
具体的には、現時点におけるプロジェクト情報の管理と利活用(分析)の方針を整理し、実行に向けた対応を検討することだが、昨今では統合型プロジェクト管理ツール(Wrike、asana、Monday.com、JIRA、Redmine、Backlogなど)などが市場シェアを伸ばしてきており、特に海外では進んで活用されていることを考えると、これらを採用することも大きな一手になると考えられる。 
なお、日本国内では、これらの統合型プロジェクト管理ツールを特定マネジメント領域においてのみ利用するケースが多くなっており(その他はEXCELベースが多い)、従来からの個別最適の考えに留まりっている。つまり、データ活用まで踏み込んだ統合管理の考えまで達していないため、ツール活用が不十分であるという傾向も見て取れる。 

 

4.人と組織のOrchestration

近年のプロジェクトは規模拡大/複雑化するケースが多く、多様な部署のメンバー、Sler等のベンダー、社外の有識者など、多くの人組織と関わる必要がある。 
プロジェクトはたとえ人数が多くともOneTeamとなって推進していくものだが、現場ではスキルのバラつきによるタスクの集中化や多忙による離脱、モチベーションダウンにより、プロジェクトの遅延や品質低下が発生するケースが多々ある。 
また、会社としても人的資本経営/Well-being経営という言葉が多く出てきており、このような一人ひとりの働き方が尊重される時代に人や組織を無視したプロジェクト運営は難しい。 
これらは会社という大きな枠組みだけの話ではなく、プロジェクトにおいても同様の考え方を重視することが求められている。 
プロジェクト全体の生産性向上を目的としたファシリテーションによるマネジメントで、すべての関係者が生き生きと働き、組織間/メンバー間の相乗効果を創出できるようにすることで、真の成果を追求できるようになるものと考えている。 
具体的には、以下の項目を実行することが求められる。 

 

  • プロジェクト推進に必要な組織内外のステークホルダーを特定
  • コミュニケーションパスの構築による組織間の連携強化
  • プロジェクト内の人的資本を重視したプロジェクト運営(リソース管理と紐づけた動機付けによるメンバーのモチベーションエンジニアリングなど) 

 

また、必要に応じて社外の有識者に参加を依頼することを推奨する。 

 

図2:“Orchestration”型PMOのポイント

最後に

本論稿では、当社のPMOの考え方として、4つの”Orchestration型”PMOを説明した。 
PMOは単純な管理作業と思われがちであったが、働き方改革を含めた環境変化を踏まえると、あらゆる業界・業種/ソリューションのプロジェクトに対して、戦略的かつ高度化された伴走型のPMOサービスが益々重要になってくると考える。 
今後も戦略的かつ高度化された伴走型のPMOサービスを徹底的に追及することでクライアントへの価値提供の最大化に尽力していきたい。 

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