アグリゲーションビジネスへの期待と課題

自己紹介と問題提起

Virtual Power Plant(VPP)に代表されるアグリゲーションビジネスは、筆者の主観ではあるが、その名称の斬新さも手伝って、当初は分散電源の普及に向けて期待値の高さが伺えた。しかし、現在ではいずれケースでも、短期的、中期的な収益性が見出しにくい状況であると考えられる。

 

筆者は、当社のGX(グリーントランスフォーメーション)チームの一員として、電力関係の新規事業開発やオペレーション改革などの案件を手掛けてきた。中長期的にどのような方向性が見出せるのかについて整理し、この事業の発展の一助としたいと考えている。

目次

  • アグリゲーションビジネスとは
  • 欧州のアグリゲーションビジオネス
  • 日本で想定される環境変化と今後のアグリゲーションビジネス
  • 弊社のサービス

アグリゲーションビジネスとは

アグリゲーションビジネスとは、太陽光発電や蓄電池など小規模な分散電源が電力系統に増加してきたことにともない、それぞれの電源をIoTなどで統合制御することで、あたかも巨大な発電所が稼働するように制御して、電力を売買することで利益を上げるビジネスである。その際、主役となるアグリゲーターは、小規模の分散電源を電力需要に合わせて引き出したり、抑制したりする制御を行う。

 

このビジネスが注目された理由は、①.再生可能エネルギーなど系統に不安定な電力が流入したことでそれを安定化させるため、価格が下落してきた分散電源が注目されていること、②.蓄電池などの電源を様々な市場で売却することで、投資回収が早いモデルを作る可能性があること、③.再生可能エネルギーを持つ需要家が、発電者として振る舞い利益を得ることで、系統の安定化と再生可能エネルギーの普及を両立させる可能性があることなどがあげられる。

 

私は、この領域の難解な専門用語を省いて説明するため、ドラゴンボールの孫悟空が、みんなから少しずつの元気(電力)をもらって相手を倒す必殺技になぞらえ、一言で「元気玉」と説明することにしている。ここでアグリゲーターは孫悟空であり、“みんな”の持っている元気は様々に異なる。同様に電源は、稼働指令から電力を引き出すまでにタイムラグがあり、引き出せる量と速度が異なるため、必殺技が完成するまでに時間がかかることが難点である。よって、いかに質のよい(大規模で応答性の高い)電源を、リソースとして確保しておくか、そしてその電源を誰にいくらで売るか?が、このビジネスの勝負の分かれ道となる。

 

しかし、そもそも他人の持ち物である電源を借用し、それを集めて、市場の価格差を利用して融通し、利益を得るビジネスとなるため、売却価格に相当な価格差分がなければ、儲かる構造になりにくいことが容易に想像できる。多様な再生可能エネルギーの導入が進み、国別に電源構成や電力価格が異なる欧州では先行して発展してきたが、相対的に電力システムの均質性の高い日本では、価格差が生まれることを待たなければならない。

 

図1: アグリゲーションビジネスのイメージ

図1: アグリゲーションビジネスのイメージ

欧州のアグリゲーションビジネス

これまで欧州のアグリゲーションビジネスの事例から、その成功要因の抽出を進めている。先行する欧州でも一定の規模の電源容量を持ち、アグリゲーションビジネスとして実績を積んでいるプレイヤーとして、NextKraftwerke、Energy2Marketが代表例として挙げられる。

 

NextKraftwerkeは、2009年にケルン大学のエネルギー研究所から創業して以来、この領域における先駆的なプレイヤーで、ドイツだけでなく欧州各国に進出している。日本でも東芝ネクストクラフトベルケ社を設立するなど積極的な動きを見せています。2021年にはRoyalDutchShell社に買収され傘下で活動している。

 

調整可能な電源の設備容量は6,000~7,000MW程度とみられており、その内訳はバイオマス発電、太陽光発電、ほかに天然ガスコジェネ、風力発電などが挙げられる。各発電所は産業用施設の発電所に限定されており、家庭用小規模電源、蓄電池などは取り扱っておらず、電源の多くが供給側の施設であり、需要側の施設が少ないことが特徴である。また電源自体は自ら保有することなく、第三者の電源を運用してメリットをシェアする運用をしている。これに加えて、電源のオペレーターとして先行的に開発した機能(需要予測、運用計画、市場取引、需給監視、需給調整、報告)を包含したソフトウエアをSaaS展開している。

 

Energy2Marketは、NextKraftwerkeと同様に2009年にドイツで創業しており、現在はフランスの大手電力会社EDFグループの傘下で活動している。電源は設備容量で3000~4000MW程度とみられ、主に産業用施設、ビルを対象にしており、風力、太陽光に加えて天然ガスコジェネなどを主力にしているとみられている。こちらも供給側の施設に着眼して電源を収集しており、ビジネスモデルも同様にメリットシェア型、さらにソフトウエアのSaaS提供を行う事業モデルである。

 

両社は業界で成功している企業であり、電源の差分は多少ありますが、ほぼ同じビジネスモデルである。良質な電源(産業側にある一定の規模を有する応答性の良い発電設備)を囲い込み、その運用によって利益を得ている。いわば、成功のセオリーをきちんと押さえたビジネスになっていると考えられる。しかし、収益化には苦労し、2017年時点での売り上げはいずれも約300(百万€)程度であるのに対し、純利益でマイナス、あるいは0.2%程度であるとみられている。経年の財務状況をみてもキャシュフローが安定しているとは言い難い状態である(図2)。バイオガス発電などの容易に出力を調整可能なリソースを借用しながら収益化が難しいという事情が、このビジネスモデルの困難さを象徴していると考えられる。

図2.欧州のアグリゲーションビジネスの先行プレイヤー

 

日本で想定される環境変化と今後のアグリゲーションビジネス

日本では、太陽光発電などの出力の調整に一定のコストを要する電源が主力となるため、短期的な展望は明るいとはいいがたい状況である。制度改革の中でドイツのように電源を運用することで利益を確保する発電アグリゲーター(特定卸供給事業者)が認められたが、現在はエナリス1社が登録をしている状況である。このようにアグリゲーションビジネス自体、収益化が難しい状況ですが、今後の事業環境変化を想定して、以下のような事業展開も想定される。

 

    1. 脱炭素を求められる需要家ニーズが高まる一方で、再生可能エネルギーの供給は不足することが想定されています。そのため、IPP事業者はコーポレートPPAなどの長期相対契約と、市場取引などのポートフォリオを組み、キャッシュフローを構成することが考えられる。需給がひっ迫する時期には、需給調整市場に対して入札する可能性もある。アグリゲーションのケイパビリティを持つプレイヤーは、その運用を代行する立場としてポジションを確立する可能性が考えられる。
    2. アグリゲーションの運用システムを提供するSaaSプレイヤーとしての立場を確保し、電源の運用能力をベースにした需給のマッチングを進めるプレイヤーとしての立ち位置を取ることが考えられる。運用システムは多くのSIベンダーから提供されていますが、アグリゲーションの利益確保が難しい状況で、回収を固定費で考えるのではなく、プロフィットシェア型の回収モデルにすることが手堅いのではないかと考えている。
    3. デマンドレスポンス事業者など、需要家側に強みを持つアグリゲーターは、需要家の電源に対するニーズを熟知している点から、IPP事業者やFIP電源の運用をするアグリゲーターに対して、顧客開拓の先鞭をつける動きが可能であると想定される。その能力を用いて大規模電源の提供事業者と連携して事業を維持し、蓄電池などの需要家側のリソースが大きく増加してくるのを待つことが考えられる。

弊社のサービス

このように、短期的には収益化しにくい事業環境にあると想定されるが、中長期的に見れば、FIP制度への移行や、需要家の脱炭素要求の高まり、市場価格の不安定化など、アグリゲーターが再エネ取引の仲介役として、機会を獲得する要素もある。電力市場は先行者優位であることには変わりなく、先見性をもって良質な電源リソースを抑えたプレイヤーが競争に勝利する。では、問題はどの段階でどのように先行した動きをするのか?といった論点に回答することだと考えている。

 

そこで弊社では、以下4つのステップで事業設計をご支援している。

 

    • ステップ1:事業環境を長期的に想定し、各種政策条件、技術条件の変化点など重要なドライバーを抽出して、シナリオプランニングを行う。
    • ステップ2:顧客各社のケイパビリティを生かして今後のアグリゲーションビジネスへの参入機会を探索します。特に重要な電源の確保では、FIT取引されている電源だけでなく、産業用の需要家に埋蔵されている利用可能な電源に着眼し、選択肢として考えることをご支援する。
    • ステップ3:事業仮説を検証し、ビジネスモデルの設計、事業計画を作成する。
    • ステップ4:PoCや事業の立ち上げ/スケール化を支援する。

 

図3:事業設計のステップ

最後に

このように、一見足元感のないアグリゲーションビジネスだが、長期的トレンドは再エネ、脱炭素化の方向にあり、それまでにどのように先行してリソースを抑えるか、一方で事業として、本格進出しないことも含め、目先を変えながらどうP/Lを組み立てるかなど、顧客の皆様の論点に答える用意を進めている。

 

次回の、「Green Transformation」では、「環境価値予測・カーボンプライシング動向」と題し、一見難しい環境価値を可視化する取り組みや価格設定のアプローチについて考察を深める予定である。

2022/07/06