デジタルサービスにおける「体験」を科学的に構築し、多くの事業の成功を後押しする

公開日:2022/09/29

 

創業期のGROUPON Japanでのクーポンサイト「GROUPON」の拡大と事業安定、恋愛・婚活サービス「with」(株式会社イグニス)の立ち上げと黒字化への取り組みなど、UXデザイナーとして10年以上にわたりデジタルサービスの立ち上げに携わってきた園田励さん。立ち上げの手法を科学的に確立し、成功の確度を高めていきたいという考えから、2019年、新しい体験の発信地・株式会社PRISMを起業、様々な企業の事業立ち上げ支援を行っています。当社常務執行役員・パートナーの佐藤が、園田さんの事業と、未来への思いを伺いました。

佐藤

本日の対談の舞台は、512 CAFE & GRILLです。

 

『都会のオアシス』文化と歴史と緑の街に。緑に囲まれたcafeを。というコンセプトで、前面ガラス張りの開放感のある外観とウッドと緑を基調にした自然の温もりを感じられるカフェです。多様な考え方を受け入れ、新しいコンセプトを生み出す園田さんのイメージにぴったりの場所であると思い、招待させていただきました。日本とは思えないロケーションと美味しい食事でリラックスしながらいろいろなお話をお伺いしたいと思います。

 

512 CAFE & GRILL

 

 

事業・サービスの立ち上げ手法を科学的に追究する

 

佐藤

まずは園田さんが株式会社PRISMを起業された経緯を教えてください。

 

園田さん(以下、敬称略)

事業やサービスを立ち上げる方法を科学して、確実に立ち上げる方法を追究したいと考えるようになったのが、起業のきっかけです。

 

十数年にわたりサービスや事業の立ち上げに携わってきましたが、「GROUPON」や「with」のように成功したものもある一方で、失敗したものもあります。自分が教科書を知らずに自信だけで進めてしまったことが原因だったときに、ものすごく責任を感じ、確実に立ち上げられる方法を追究したいと思うようになりました。

 

また、モノやサービスから得る体験をいかに魅力的にデザインできるかが、0→1の事業立ち上げや、1→10の事業拡大の肝だという仮説を持っていて、そこを突き詰めていく会社をつくりたいという考えもあり、今の会社を立ち上げました。

 

 

多彩な園田さんの肩書

 

 

佐藤

「体験をいかに魅力的にデザインできるかが、事業の立ち上げ・拡大の肝」とはどういうことでしょうか?

 

園田

UXデザインやサービスデザインに携わる中で感じていたのが、事業の立ち上げのプロセスでは、モノ・サービス→人→金→情報という流れで拡大していくということです。

 

どういうことかというと、モノやサービスというのはビジョンあってのもので、「こういうビジョンを叶えたいからこういうモノ(サービス)をつくろう」というところに人が集まり、人が集まってきたところにお金がついてくる。そして、サービスができてユーザーの情報がたまってくるという流れがあります。

 

そして、この流れがあるからこそ、まずはビジョンに基づいてモノやサービスをつくるところで魅力的な体験を設計・構築することが大事で、そこから得られる体験が説得力のあるものであれば、人や資金、情報の獲得もうまくいくのではないかというのが僕の仮説です。ここを突き詰めていく会社にしたいという思いがあります。

 

 

PRISMが提案する新規事業の方法論

 

佐藤

なるほど、確かにその通りですね!では、具体的には、どのようなことに取り組まれていますか?

 

園田

今は、クライアント企業に入って共同で研究開発を行う仕事に多く取り組んでいます。例えば、架空の設定になりますが「少子化」などのテーマと、ユーザーのターゲットやペルソナが決まっている状態で、「このテーマ・ターゲットに対して何をしていくか?どんなサービスをつくるか?」を検討するところから入り、その企業が提供する価値の探索や検証を行い、サービスをつくっていくことをしています。

 

佐藤

かなり広い範囲の検討が必要そうですね。価値の探索・検証というのは、どのようにされているのですか?

 

園田

まずはユーザーにヒアリングをして、インサイトをつかみペルソナの解像度を上げていきます。その中で、サービスの一番のコアになる価値の塊を探し、それが見つかったら枝葉の体験を設計し1つのサービスをつくっていきます。

 

これは、研究開発においても、ベンチャー企業と協働してサービス開発をするときも同じです。コア価値を見つけて、その価値を上げるとともに肉付けしていくことでサービスという塊になる。そして、サービス全体の印象がブランドになるように設計・構築しく。このプロセスを確実に進めて立ち上げるということをしています。

 

熱くメッセージを語る園田さん

 

佐藤

「コア価値」!まさに僕も「コアバリュー」と呼んで、まったく同じことをクライアントと討議しています。よく「ワンストップサービス」などと言いますが、集客力が強いコアバリューがなければ、他のサービスも使ってもらえないですからね。

ところで、立ち上げを科学するとおっしゃっていましたが、科学的な方法はどのように追究されているのでしょうか?

 

園田

アカデミックの専門家とコラボして科学的な方法を磨いています。今だと、プロトタイピングの研究者と協働して、アカデミックとビジネスをつなげ、実行していくことをしています。今まだその1人とのコラボですが、協働する人や分野をもっと広げて、立ち上げるサービスに応じて、アカデミックとつなげられる要素があればつないでいきたいですね。

 

佐藤

何をアカデミックに頼るのかというところのセンスも重要ですよね。人間の感情やアンメットニーズ、ペインポイントをアカデミックのところに探しに行こうとすると絶望的ではありませんか?

 

園田

そうですね、そこは絶望的かもしれません。他方で、0→1の立ち上げにおいては、とっかかりがまったくないので、拠り所を探すのにアカデミックのデータが役に立ちます。
 

園田さんが経営する株式会社PRISM

 

園田さんがCDOを務める幼児食宅配事業「homeal」のWebサイト。

幼児食という商品のみならず、「子どもの食の悩み・課題をサポートしてもらえた」といった体験全体を販売する考えでサービスを設計している

 

新規事業の立ち上げ支援を通じて日本を活性化させていきたい

 

佐藤

ところで、園田さんはなぜUXデザインの観点から事業やサービスの立ち上げに携わっていくことにご自身の道を決められたのですか?

 

園田

Groupon Japan時代にUXデザインに携わり、「どうすれば良い体験になるのか?」ということを考えて検証していくのがものすごく楽しかったからです。当時はまだUXが言われ始めたばかりの時期で、ある日突然、上司から「明日からお前はUXデザイナーだ」と言われ、UXという横文字にうさんくささを感じながら「UXとはなんぞや?」ということを自分で調べていきました。

 

UXは日本語に訳すと「ユーザー体験」ですごく簡単な言葉ですが、「普通に使える」ことも、「参加できる」ことも、魅力的な商品やコンテンツに「いいね!」ボタンを押して自分の好きなものをカタログ化してそのブランドの価値の中に没入して購入に至っていくのも体験で、本当に幅広い。それらを「どの技術や手段を組み合わせると良い体験になるのか?」と考え、検証していくのがすごく楽しくて、十数年間ずっとやっています。

 

佐藤

なるほど。きっかけは、UXとの「運命の出会い」というか「偶然の出会い」だったんですね。でも、その出会いには感謝ですよね。
ちなみに、現在のPRISMの事業では、どのようなところに面白さや、やりがいを感じますか?

 

回答する園田さん(左)とお話を伺う常務執行役員佐藤(右)

 

園田

汎用的で再現性のある成功のフレームワークを考え、それをクライアントのアイデアを形にするところにあてはめてうまくサポートできることに楽しさを感じますね。

 

佐藤

様々なサービス・事業に適用しながら仮説を検証し、手応えを感じることが楽しいというところでしょうか?

 

園田

そうです。幅広くやっているからこそ知見がたまりますし、クライアントの事業成功も後押しできます。日本のスタートアップには、立ち上げようとしてもなかなか立ち上がらない・成長しないという課題がありますよね。人口に対して新規事業が立ち上がる割合もかなり低い。それはとても悲しいことですし、日本の経済や社会、文化が衰えることなく、住み良い国であり続けてほしいという思いもあるので、新規事業の立ち上げ支援を通じて日本の企業や経済をもっと活性化させていきたいと考えています。

 

PRISMについても、まだ弱小な会社ですが、様々なサービスがぽこぽこと立ち上がる会社にしたいと思っています。それも、ロジックをもとに、10個トライしたら3つあたるくらいに。

 

佐藤

「千三つ(せんみつ)」という言葉がありまして、新規事業は1,000に3つしか成功しないと言われています。そう考えると、10に3はものすごい数字ですよ。

 

園田

それは知らなかったです。立ち上げ方が確立されれば、そこに集まる人が増えるし、そうすれば、資金を投入する人も増えます。その循環を生み出していきたいですね。僕は100%子会社をつくりたいという欲求があまりなくて、多くの人で小額ずつ出資して、PRISMとしてノウハウを入れながらみんなでつくっていくというやり方をしたいと思っています。その点で、大勢を巻き込める仕組みとしてWeb3.0には期待しています。

 

佐藤

Web3.0の世界では、理論だけでいうと、プロダクトやサービスの権利を作った人にきちんと持続的に利益を分配できますよね。「僕はプロダクトAのこういう役割で1%の権利を持っている。それで生活費を稼ぎながら、今はプロダクトB、C、Dの3つの立ち上げに挑戦している。でも、会社には1つも所属していません」といったことも成り立つようになるでしょうか?

 

園田

そうですね。それが成り立てばすごく面白くなるし、1つのプロダクトをつくるにあたっての貢献度が可視化されて貢献度に応じて資金が流れ、立ち上げた人がその資金を未来永劫もらえるといったシステムをつくることもできるかもしれません。

 

すると世の中が変わります。物好きな人たちが採算度外視でつくるとこから始まるのではなく、最初からお金儲けを考えてつくることができる時代になります。それって、エンジニアの方々がかなり救われる、すばらしいことだと思います。こういったことも視野に入れつつ、面白いことができないかなと模索しています。

 

あとは、粋な体験ができるサービスを増やして、世界に発信していきたいという思いもあります。

 

佐藤

粋な体験?すごく魅力的な言葉ですが、どういう意味でしょうか?

 

園田

「粋」という言葉には、「いき」「すい」の2つの読み方がありますが、一説には、「いき」は吐く息に通じ、削ぎ落とした美しさを表し、「すい」は吸う息に通じ、良いものを取り入れた、装飾した美しさを表すと言われるそうです。UXデザインでいうと、「使っていて楽しい」「華やぎや彩りを感じる」といった要素が少しでも入っていると、より良いものになっていくと思います。そんな粋な体験ができるサービスを増やし、世界に発信していきたいですね。

 

佐藤

なるほど。「粋」の意味は初めて知りましたが、確かにすごく納得できます。では最後に、園田さんにとって「Produce Next」とはどういうことか教えて頂けますか??未来をつくっていくことへの園田さんの思いをお聞かせください。

 

園田

「粋な体験が溢れる世界へ。」です。

 

佐藤

ありがとうございました。これから園田さんがつくるサービスが楽しみです。

 

 

「粋な体験が溢れる世界へ。」 写真左:佐藤 右:園田

 

 

 

ビジネスにおけるデザイン思考の重要性

 

常務執行役員 パートナー  佐藤司

 

佐藤

経営においても、デザイン思考の重要性が言われて久しいですが、日本においてはなかなかその重要性が理解されず、「デザイン思考を取り入れるともっと良くなるのに」という事象が多々あります。園田さんのキャリアやPRISMの事業から、デザイン思考の重要性を改めて感じました。

 

そして、UXに長けた人はいても、起業や事業立ち上げができるかというと、そのような人は多くないという点で園田さんは稀有な存在ではないかと思います。10に3つのヒットを出していくという園田さんの意気込みに期待したいと思います。

 

 

園田励(そのだ・れい)

 

株式会社PRISM 代表取締役社長。マス媒体の映像制作・グラフィックデザイナーを経て、2010年、Groupon Japan入社。UXデザイナーとしてクーポンサイト「グルーポン」の成長から事業安定までに携わる。2014年、株式会社イグニスに移り、恋愛・婚活サービス「with」を立ち上げ、黒字化。並行して2017年には個人事業として上場メーカー数社にデジタルサービス立ち上げ支援コンサルティングを提供。2019年、株式会社WARCに参画し、HR Tech部門の事業責任者としてダイレクト型リクルーティングサービス事業の企画・立ち上げを担当。同年、デジタルプロダクト専門クリエイティブギルド・株式会社PRISMを創業。ビジネスの成功経験のあるメンバーとともに、メーカーと協働での研究開発やスタートアップの事業立ち上げ支援などに取り組んでいる。

 

 

佐藤司(さとう・つかさ)

 

常務執行役員、パートナー。ローランドベルガー、コンサルティングベンチャーの立ち上げメンバーとして、戦略立案から実行まで一貫して支援。 小売業、製造業、エネルギー、金融等多くの業界・テーマでの知見を持つ。 ライズ・コンサルティング・グループ参画後は、新規事業戦略案件、海外進出戦略、ビジネスモデルの刷新、中期経営計画等の戦略コンサルティングを担当。

取材したお店

 

 

店名:512 CAFE&GRILL

住所:〒107-0052 東京都港区赤坂9丁目5−12 A棟1F パークサイドシックス

電話番号:03-5772-1180

URL:https://512.tokyo/

 

記事作成:浅田夕香