ベガルタ仙台様と「地方創生/SDGs」をテーマにした対談を開催

公開日:2022/09/08

 

2022年8月16日、ベガルタ仙台代表取締役社長 佐々木知廣さまとベガルタ仙台のサステナブルパートナーである株式会社ライズ・コンサルティング・グループ常務執行役員の白井亮がそれぞれの立場から、SDGsや地方創生への取り組みについて語り合いました。

“次世代に残す大切なものになる”ための取り組み

 

司会:

ベガルタ仙台さまはSDGsに注力されていますが、地方創生、SDGsにかける想い、取り組みの背景や意義について教えてください。

 

株式会社ベガルタ仙台 代表取締役社長
佐々木知廣様

 

佐々木:

昨年社長就任から1~2か月経過し、新型コロナウイルスと向き合わざるを得ない状況下で、「自分たちは次世代に何を残せるのか、何を残したいのか」という根源的なところにまで思いを巡らせることがありました。ベガルタ仙台という存在を残していきたいと自分たちが思えるか、社員たちに問いかけてみました。同時期になぜSDGsに取り組むのかについても併せて考えてもらいました。

 

当クラブはこの地域で27年間存続してきており、スポーツインフラとして定着していることは疑う余地がありません。
そのスポーツインフラを支えるボランティア、市民後援会など、各層で社会的ネットワークが形成されていることも紛れもない事実です。

 

一方で、私たちはプロスポーツクラブといっても地方の中小企業であって、新たな仕事、負担を次々に付加できるほどのキャパシティはありません。その為、定常業務にSDGsの取り組みをビルトインできるようチューニングしていく、という考えでなければ継続できません。

 

そこで、SDGsの活動は何か新しいことに取り組むのではなく、定常業務の中にSDGsの観点を取り込んでいこうという考えに至りました。
例えば、私たちの持続性を脅かす大きな課題が高齢化です。仙台は大学が多数あり、一見すると若者が多いように思われがちですが、高齢化のスピードは東北でも群を抜いています。
そしてユアテックスタジアム仙台がある泉区は仙台市の5区の中でも抜きん出て高齢者が多い地域です。スタジアム来場者の構成を見ると泉区の人が圧倒的に多いですから、このまま何も手を打たなければ間違いなく私たちのスタジアムは高齢化の波に飲み込まれます。

 

今だけではなく、将来はどうなのだろうかという時間軸を入れると、社員も高齢化を「じぶんごと」として捉え対応を考えるようになります。

 

このように、ユアスタでの試合運営において常にSDGsの観点をもって運営しよう、結果として「ユアテックSDGsスタジアム」と呼ばれるような取り組みをしていこう、と社員に呼びかけました。

 

また、もう一つの視点として私たちが親企業を持たない市民クラブであるということも重要です。親企業を持たない中で存続してくることが出来たのは各層に築かれた社会的ネットワークに支えられてきたから、というのは先ほど申し上げた通りです。

 

そう考えた時に県内に35ある自治体とのつながりをより強固にすることが大切である、ということに気づきました。
そこで、宮城県内35自治体の全首長さんに会いに行くことにしました。半年ほどかけてすべての自治体を訪ねてみると、みなさんベガルタ仙台のことを非常に気にかけてくれていることがわかりこれを大切にしなければいけない、と改めて思うことができました。

 

司会:

ライズ・コンサルティング・グループ白井さまから貴社のSDGsへの取り組みとベガルタ仙台さまにおけるSDGs推進への関わり方について話をお願いします。

 

株式会社ライズ・コンサルティング・グループ
常務執行役員 白井亮

 

白井:

私たちライズ・コンサルティング・グループは「Produce Next~次の未来を創造する~」をコンセプトに、日々企業の新たな価値の創造や企業変革などを支援させていただいているコンサルティングファームです。

 

その仕事の幅は非常に広く、企業の経営戦略策定から、オペレーション改革、大規模なIT導入のプロジェクトマネジメント支援まで多岐に渡ります。その中で、「Produce Next」を最もわかりやすく、かつ、効果的に体現できる取り組みが地方創生やSDGsの取り組みであると考えています。

 

私たちらしい地方創生やSDGsとの関わり方の一つとして念頭に置いているのは各企業や団体が行っている単独の活動や取り組みと、他の様々な知見やサービスをつなぐハブとしての役割を担うということです。

日々の業務で培ったネットワークや知見を活用し、各企業や団体、地方自治体といった点を有機的に線で結び付けていくことで、他の企業さまとは違った形でSDGsのゴール実現に貢献できると考えています。

 

また、ベガルタ仙台さまへの支援に話を移しますと、無理な取り組み目標を掲げずに普段の事業活動にビルトインしていく、という目標設定が非常に良かったと感じています。SDGsの取り組みは、CSR活動とは異なり、本来的には事業活動の中に組むことが重要であるという特質を持っているものだからです。

 

実情からかけ離れた目標設定や新規の取り組みを行うよりも、既存の取り組みにどうやってSDGsを紐付けるかを考えることを社員のみなさんにメッセージを発信したことが素晴らしく、特徴的な取り組みの端緒になったと考えられます。

 

もう一つは先ほど佐々木社長も話題に出された市民クラブの話です。
私たちが打ち合わせにご一緒させていただいた初期の頃に、各部署で検討されている内容をお聞きして「これは他のクラブでも同じことが言えるのではないか」という印象を正直持ちました。そのため、ベガルタ仙台さまの方針としては物足りないのではないか、とコメントさせていただいた記憶があります。

 

20数年間積み上げてきた取り組みや成果、そして市民クラブとしての地域との繋がり。そうした他のクラブにはない独自の特徴を生かしたSDGsの取り組みを推し進めるべき、という思いから進言したことを覚えています。

 

司会:

大きすぎる目標を立てた結果、形骸化してしまうというのはよく聞く事例で既存事業とのリンクというのは大きな要素だったと思います。実際に取り組んでいこうという段階でどのように社員のみなさんへの意識付けを行っていったのでしょうか。

 

佐々木:

SDGsの17のゴールを見てみると、8割方がエコや気候変動の問題が取り上げられていることに気づきます。我々もスタジアムで「エコステーション」と名付けて、ごみの分別に取り組んでいました。すでに既存の取り組みの中で非常に大きなことをやってきたわけで、誇りを持って継続していこうよ、という話をしました。

 

それだけではなく、SDGsの取り組みとしてやっていく上で、更なるステップアップとして二酸化炭素削減量などの明確な数値目標を持ち、その目標に向けた活動を実施していこうという話もしてきました。このように新たに何かを作らなくても自分たちがすでにやっていること、もうできていることがあるという話を伝えていきました。

 

また、「エコステーション」でのごみの分別を行っていく中で、目につくものの一つとして、非常に多くの紙コップがありました。ただ廃棄されるだけの紙コップを何とかしたいと考え、スポンサー企業でもあるTBMさまのLIMEXのカップを採用。回収したカップをアップサイクルして椅子やテーブルにしようと展開していきました。

 

“スポーツを活用したまちづくり”への関わり方

 

 

佐々木:

今は自治体がどうしたいのかということを出発点に、35自治体とのつながりをより深めていくためにベガルタ仙台をまちづくりに使ってください、というスタンスでお声がけしているところです。

 

そうした中でスポーツコミッションの立ち上げという話題がよくあがりますが、ベガルタ仙台自体がスポーツコミッションの機能は相応に有していると思っています。これらの相談をいただけるということは各自治体から有力なノウハウを持っている企業である、と認識されているのだろうと感じています。

 

白井:

スポーツコミッションのアウトソーシングのような感じですね。コンサルティングをしていると、他業界・業態でもよく見かけるケースです。すでにノウハウのあるベガルタ仙台さまに相談するというのは自然なことだと思います。

 

私たちコンサルティングファームとベガルタ仙台さまのようなスポーツクラブを見比べると、スポーツクラブが自治体やスポンサーをつなぐように私たちは企業や業界団体をつなぎ、可能性を広げるお手伝いをしています。

 

こうした「ハブ機能」のようなところが共通点である、と思います。

 

現在ベガルタ仙台さまと進めている地方自治体との活動に関しても、各自治体の抱える課題に対して、ベガルタ仙台さまと私たちの強みを掛け合わせて、価値共創の形を作っていければと考えています。

ベガルタ仙台とライズ・コンサルティング・グループの今後のパートナーシップについて

 

司会:

ここまでSDGsに対する取り組みに関して様々なお話をお聞かせいただきました。最後に両者のパートナーシップおよび今後の展開についてお聞かせください。

 

佐々木:

ライズさまは弊社のことを深いところまでよく理解してくれていると感じていましたし、時には辛辣なご意見をもらったりしながら信頼関係を構築してきました。
地域連携について方針を検討している時にも理解を示してくれましたし、同じベクトルを向いてくれていることに心地良さを感じています。

 

白井:

SDGsや地方創生への思いというのは会社として温めていたものがありましたので、ベガルタ仙台さまとはベクトルが合っている、と私たちも感じております。

 

今後もそのベクトルを合わせながら、SDGsの実現を通した社会問題の解決に向けて、ベガルタ仙台さまとともに取り組んでいけたらと考えています。そして、私たちの企業理念にあります通り、結果として世の中に新しい価値を創造したいと思います。

 

佐々木:

今年1年、「楽しく」をキーワードにやってきています。
主力商品は当然のことながらトップチームの試合ですが関連するイベントなどは昨年、一昨年とは比較にならないほど多種多様に展開できています。

 

試合ごとにアンケートを実施していて、おかげさまで圧倒的に「楽しかった」「また来たい」という回答を多くいただき、手応えを感じています。昨シーズン降格してしまったものの、それでも楽しい1年だったと振り返ることができるように残りもがんばっていきたいです。

 

今後は、新しいことをやる前に本業をブラッシュアップすることが大事だと思っています。手応えを感じたことはより洗練させたいです。この1年でかなりのノウハウを蓄えましたのでもう1年こうした取り組みを継続させていくつもりです。

 

そして35自治体のみなさんにこういった取り組みを伝えていくことで、各自治体との協業につなげたいと思います。
ご要望の多いスポーツコミッションの立ち上げからお手伝いしていきたいですし、社会課題の解決にしっかり関わることを愚直に続けていきます。

 

白井:

ライズ・コンサルティング・グループとしては、コンサルティングファームとしての経験やノウハウをベガルタ仙台さまの活動に還元していきます。
ベガルタ仙台さまが取り組もうとしている社会活動の具現化を地道に一歩一歩後押ししていくことが必要だと考えています。
そのような中、今年は七ヶ宿町でワークショップを一緒に開く機会をいただきました。

 

これは現地の住民の方々がどのような町にしたいのかなどの思いを引き出すための場であり、私たちコンサルタントの本領が発揮できる場でもあり、地方創生の現場に携われた良い機会でした。当日参加した弊社のコンサルタントにとっても非常に良い刺激になったと思っています。

 

また、弊社社員が七ヶ宿町からリモートで働くワーケーションの取り組みも検討しております。このように、ベガルタ仙台さまとの関わりから様々な新しい取り組みの種が生まれております。こういった活動の積み重ねは、将来的に私たちの企業価値の向上につながると確信しています。

 

これからも長期視点で様々なことをリンクさせながら一緒に面白い取り組みができればと考えています。

 

2022.09.08